
江湖の世界が開かれた。『蓮花楼』の世界に触れたときに、こう感じた。江湖とは自由があり己の武芸や智力を頼りに生きる者たちが集う世界、いわゆる武侠の世界だ。『蓮花楼』では、その江湖で次々と起きる不可解な事件に謎の神医・李蓮花が迫っていく。李蓮花が呪いや妖怪のしわざだと恐れられる事件のトリックを見破り、ロジカルに解決していくさまは実に痛快だ。トリックにリアリティがあるからこそ、私たち読者も李蓮花と共に推理しているような感覚を味わえる。加えて建物や情景の精緻な描写、そして共感性の高い人物像……これらの要素が作者の繊細な筆致にのり、ファンタジーを現実に引き寄せた。これまで外から眺めているだけだった江湖の扉がここに開かれたのだ。
『蓮花楼』は、原作小説で「李蓮花」という人物をさらに深掘りし、ドラマ版で人物の関係性をより立体的に描いている。両方味わえば『蓮花楼』の世界をもっと深めることができるだろう。
中華エンタメライター/翻訳者
沢井メグ

勝手に神医とあがめられ、ポンコツぶりがバレるとガッカリされる主人公の李蓮花。壮絶な過去と運命を背負いながらも、飄々と生きる姿が魅力的です。「蓮花楼」のドラマを見た方は、演じたチョン・イーの姿で小説でも脳内再生されるかと思いますが、「気品のある温和な容貌だが、美男子というほどでもない」など文章による表現もドンピシャ!(残念ぶりの念押しに苦笑)物語として読む楽しさも味わえると思います。原作ではドラマより、李蓮花のおっとりふわふわ感が強い気もしますが、こちらでも怪事件の謎解きに引っ張り出され、適当な感じなのに最後には事件の謎がとけている!ドラマをご覧になっていない方でも、次々と起こる猟奇事件、連続殺人、幽霊騒動やドロドロの人間模様といったミステリー要素、武侠ドラマの醍醐味である超人的な技の応酬や、隊商や宿屋などの描写に引き込まれることでしょう。エンタメ要素特盛りでミステリー好きにもおすすめです。
編集者、ライター
熊坂多恵

李蓮花がたまらなく魅力的!
のんびりした口調で人をけむに巻くやさぐれた流れの医師かと思いきや、鋭い頭脳で難事件を解決していく名探偵なのだ。凡庸に見えて実は天才!そんなギャップを持つこのキャラクターに誰もが心惹かれてしまうだろう。
その魅力はドラマ版でも同様で、小説を読んでいてもチョン・イー演じる李蓮花の飄々とした佇まいや方多病との楽しい掛け合いが脳内にリンクしてニヤニヤさせられる。
だが、読み進むうちに心は小説世界に完全トリップ。次々に起きる猟奇事件や、武林に名を轟かせた侠客たちの戦いにぐいぐいと引き込まれていく。
複雑怪奇な思惑がうごめく江湖を渡っていく李蓮花の運命やいかに⁉ 彼の活躍と共に武侠小説の面白さをじっくりと味わってほしい。
アジアン・エンタメライター
青木久美子
書籍情報

©藤萍/処豊和/Tianjin Staread Culture Communication Co., LTD./NIPPAN IPS Co., Ltd.
著者/藤萍 訳者/浜見凪 装丁/宮川和夫事務所
レーベル
VOILIER Books
発行
日販アイ・ピー・エス株式会社(IPS)
発売日
2025年3月25日(火)
価格
本体2,530円(本体2,300円+税10%)
ISBN
978-4-86505-552-8